英中銀総裁発言でポンド下落、米雇用統計を控え為替市場に緊張感

3日の外為市場で英ポンドが下落した。主因はイングランド銀行(英中央銀行)のベイリー総裁の発言である。同総裁は英ガーディアン紙のインタビューで、インフレ抑制時には利上げにより積極的に取り組む姿勢を示した。この発言を受け、ポンドは対米ドルで1%下落。市場の反応は素早く、鋭敏であった。
注目すべきは、12月の金融政策委員会(MPC)での連続利下げ可能性が意識され始めたことである。本稿執筆時点で12月利下げ確率は75%前後まで上昇している。この連続利下げ期待の高まりが、英ポンドの重しとなっているのだ。
一方、米国では異なる展開が見られた。強い経済指標を受けたソフトランディング期待の高まりで、FRBの利下げペースについて再考が迫られている。パウエルFRB議長は利下げについて「急ぐ必要なし」との姿勢を強調。8月JOLTS求人件数と9月ADP雇用統計も労働市場の堅調さを示唆した。
これらの展開を受け、11月FOMCでの大幅利下げ期待が急速に後退。外為市場では再び米ドル買いの圧力が高まっている。ドル指数(DXY)は50日線を突破し、MACDはゴールデンクロスへ転じ、上昇トレンドにある。
ポンドドル(GBP/USD)の下落ムードが強まっている。3日はベイリー発言で1%下落し、短期サポートラインを大陰線で下方ブレイク。1.31割れの局面も見られた。RSIとMACDの動きも弱気相場への転換を示唆している。
一方、ポンド円は興味深い動きを見せている。3日の外為市場では対日本円でも英ポンド売りとなったが、対米ドルやユーロと比べて下落率は限定的であった。これは”石破ショックの逆回転”による円安が相殺要因となったためである。
日足チャートを見ると、ポンド円は石破ショック逆回転の円安でサポートされている様子が伺える。RSIはデッドクロスへ転じる兆しがあるが、売られ過ぎの水準への急落は見られない。MACDもゼロラインを上回る水準を維持している。21日線と50日線ではゴールデンクロスへ転じる可能性もある。
9月雇用統計が米ドル買いの要因となり、ポンドドルが50日線や1.30レベルを下方ブレイクしても、米ドル高がドル円をサポートする可能性がある。ポンド円はドル円との間で高い相関関係があるためである。
実際、ドル円が161円台に向けて上昇し始めた2023年以降の相関係数を見ると、ポンド円とドル円は0.725と高い一方、ポンドドルとの相関係数は0.341と低くなっている。
さらに現在は、石破ショックの逆回転で円安が進行しやすい状況にある。9月雇用統計が米ドル買いの要因となりドル円が上昇すれば、ポンド円はドル円の動きに追随する展開が予想される。
本日のポンド円の上値ポイントは、10月3日の高値195.17レベル、9月27日の高値196.00レベルである。196円台へ上昇すれば、7月高値と8月安値で算出されるフィボナッチ・リトレースメント61.8%の水準197.41レベルのトライも視野に入るであろう。
一方、9月雇用統計が米ドル売りの要因となる場合は、ドル円の反落を想定する必要がある。ポンド円もドル円の下落に追随するであろうが、石破ショックの逆回転による円安が下支えとなる可能性がある。
下値のポイントは、50日線(189.80レベル)と21日線(189.60レベル)である。これらの移動平均線をトライするシグナルとして、フィボナッチ・リトレースメント61.8%の水準191.87レベルと、76.4%の水準191.10レベルに注目である。
190円台への下落の場合、10月2日のサポートとなった190.50レベルが焦点となるであろう。これを下方ブレイクすれば、189円台への下落と50日線・21日線のトライを想定する。
15分足チャートを見ると、MACDがデッドクロスへ転じゼロラインを下回り、RSIも売られ過ぎの水準付近に向けて低下している。目先はポンド円の下落を想定しておくべきであろう。
ただし、RSIが売られ過ぎの水準でゴールデンクロスへ転じる場合は、相場の反発を意識する必要がある。MACDでもゴールデンクロスが確認されれば、その可能性はさらに高まる。
為替市場は今、複数の要因が絡み合う複雑な展開を見せている。英国と米国の金融政策の方向性の違い、日本の政治情勢の変化、そしてグローバルな経済指標の動向。これらが相互に影響し合い、為替レートを左右している。投資家は、これらの要因を総合的に分析し、慎重に市場動向を見極める必要があるであろう。
米雇用統計は、この複雑な状況にさらなる変化をもたらす可能性がある。市場参加者は、データの内容とその後の市場の反応を注視する必要がある。為替市場は、常に予想外の展開がありうることを念頭に置き、柔軟な対応が求められる局面が続きそうである。
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