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2024年11月のドル円相場動向:地政学リスクと金融政策の複合的影響分析

ドル円相場は、複数の重要な要因が交錯する中で新たな展開を見せている。11月19日のニューヨーク市場での終値は1ドル=154.65円と前日同水準で取引を終えた。取引時間中には一時的に153.28円まで円高が進行する場面も見られたが、その後は円売り優勢の展開となった。

この一時的な円高の背景には、二つの地政学的要因が存在した。第一に、ロシアのプーチン大統領による核兵器使用原則の見直しに関する発言、第二に、ウクライナによる米国製地対地ミサイル「ATACMS」を用いたロシア領内への攻撃報道である。これらの事態を受けて、安全資産とされる円やスイスフランへの一時的な資金シフトが発生したが、いわゆる「有事の円買い」は短期的な現象に留まった。

市場の関心は、主にアメリカの金融政策動向に集中している。トランプ次期大統領による閣僚人事の発表が続く中、その経済政策が物価上昇圧力として作用する可能性から、FRBの追加利下げペース鈍化観測が強まっている。これを裏付けるように、パウエルFRB議長は11月14日の講演において、利下げを急がない姿勢を明確に示した。その結果、CMEグループの算出によれば、12月17、18日開催予定のFOMCでの利下げ確率は57%程度まで低下し、講演前の80%から大幅な後退を見せている。

FX市場全体でもFRBの利下げ圧力後退が意識されており、LSEGのデータによれば、主要通貨の対ドルレートは大統領選挙後から11月14日にかけて3%程度の下落を記録した。その後、部分的な買い戻しは見られるものの、ドルに対して総じて軟調な展開が続いている。

日本の金融政策動向も重要な市場材料として注目を集めている。11月15日には円安が進行し1ドル=156.74円を記録したが、植田日銀総裁の講演予定が伝わると、円安けん制への期待から153.85円まで円高が進展した。植田総裁は11月18日の講演で、物価上昇率が2%で安定する見通しが実現した場合の政策金利引き上げ継続という従来の方針を再確認し、これが円安進行の抑制要因として作用している。

また、日本の金利動向にも注目すべき変化が現れている。LSEGによれば、10年物国債利回りは11月15日に1.075%まで上昇し、日米の長期金利差は3.3%ポイント台で推移、その拡大に歯止めがかかっている状況である。

市場の焦点は、11月22日午前8時30分に発表予定の10月CPIデータに移っている。これは2024年度下半期開始における企業の価格改定の影響を確認できる重要な指標となる。ブルームバーグの事前予想では、総合指数が前年同月比2.3%、コア指数が2.2%と9月からの減速が見込まれる一方、コアコア指数は2.2%と9月の2.1%から加速が予想されている。

CPI結果次第では、12月の日銀金融政策決定会合での利上げ期待が一層高まる可能性がある。現時点での12月利上げ確率は52%程度と見積もられており、この確率の上昇は円高圧力として作用する公算が大きい。植田総裁も、10月CPIにおける賃上げを反映したサービス価格の上昇について注視する姿勢を示している。

このように、当面のドル円相場は、アメリカの金融政策スタンス、日本のインフレ動向、さらには地政学的リスクという複数の要因が絡み合う中で、不安定な展開が続く可能性が高い状況となっている。特に、FRBの金融政策と日本のインフレ指標が、今後の相場動向を左右する重要な要因となることが予想される。

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