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ドル円レンジ相場の行方:PCE指数と地政学リスクが鍵を握る

ドル円相場は現在、155円を挟んだレンジ相場で推移している。この背景には日米の利回り格差の動きがある。国内金利は日銀の追加利上げ観測を受けて上昇傾向にあり、特に金融政策の方向性を反映しやすい2年債利回りは先週22日に0.585%と、2008年11月以来の高水準を記録している。

10年債利回りも1%台へしっかりと上昇している。一方、米国の2年債、10年債利回りはそれぞれ4.3%、4.4%と高水準を維持しているものの、国内金利とは対照的に上昇幅は抑制されている。この結果、日米利回り格差の拡大が一服し、11月以降は横ばいで推移している状況である。これを受けて、ドル円相場もレンジ相場に陥っている。

今週の外為市場において最も注目される材料は、27日に発表される10月米個人消費支出(PCE)価格指数である。このほかにも11月の消費者信頼感指数や新規失業保険申請件数など重要な経済指標の発表が予定されているが、PCE価格指数は特に重要である。なお、28日は米国が感謝祭で休場となり、29日も短縮取引となるため、主な相場動向は27日までの動きに注目が集まる。

米大統領選挙では共和党のトランプ候補が優勢となり、議会選挙でも共和党が上下両院を制する「トリプルレッド」の実現可能性が高まっている。これにより主要なトランプ政策が議会を通過する可能性が大幅に上昇した。

米金利は4%台と投資妙味のある水準にあるが、米国債の買い戻しは現時点では限定的である。トランプ候補と共和党優勢の報道が出始めた選挙前から米金利は上昇傾向にあり、これはトランプ政策によるインフレ再燃への警戒感を反映した動きと考えられる。

PCE価格指数の前年同月比は9月から伸びが加速すると予想されている。FRBが最も重視するこの物価指数でインフレの粘着性が確認された場合、12月の利下げ期待は後退し、米金利の上昇要因となることが予想される。これにより米ドル高が進行し、ドル円のレンジ相場上方ブレイクの可能性が高まる。

テクニカル面では、ドル円は21日線をサポートラインとして底堅さを維持している。153円台への下落も見られるが、サポートラインとしての機能を果たしている。日足のMACDはデッドクロスに転じているもののゼロラインを目指す動きは見られず、モメンタムはゼロラインを上回っている。また50日線と100日線はゴールデンクロスに転じており、強気地合いを維持している。

上値では155.00円付近のトライアングル上限が重要な節目となる。これは短期的なレジスタンスラインとしても機能しており、この水準を完全に突破した場合は156.00円を試す展開が予想される。さらに上昇が続き156円台に乗せた場合は、フィボナッチ・リトレースメント76.4%の水準である156.67円への上昇も視野に入る。この水準を完全に突破できれば、157円も射程圏内となるだろう。

一方で、突発的な円高リスクにも警戒が必要である。その要因として、以下の点が挙げられる。第一に、ウクライナ情勢の緊迫化である。ウクライナ軍による米国製ミサイルATACMSの使用や、フランスの長距離ミサイル「SCALP」によるロシア領内攻撃の容認など、戦闘激化への懸念が高まっている。

ロシアのプーチン大統領は22日、新型の中距離弾道ミサイルによる攻撃を継続する意向を表明しており、地政学リスクは一段と高まっている。

第二に、日銀の追加利上げ観測の強まりである。12月の金融政策決定会合での利上げ確率は、選挙前の30%から60%まで上昇している。この状況下で、日足のMACDはデッドクロスに転じ、モメンタムもゼロライン付近で横ばい推移にあり、強気の地合いが徐々に後退している兆候が見られる。

第三に、通貨オプション市場のリスクリバーサルがドルプットに傾いていることである。予想変動率の上昇は現時点では抑制されており、今夏のような急激な円高は想定しにくい状況にあるが、様々なイベントにより大きく変動する可能性には注意が必要である。

下値では、トライアングルの下限と半値戻しの水準である154.00円が注目される。この水準を下方ブレイクした場合は21日線を試す展開となり、さらに下落が進めば153.37円(フィボナッチ・リトレースメント61.8%)が焦点となる。この水準は今月11日以降、重要なサポートラインとして機能している。複数の円高要因が重なった場合は、152.57円(フィボナッチ・リトレースメント76.4%)まで瞬間的に下落する可能性も想定しておく必要がある。

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