日銀の追加利上げ観測で円高進行、ドル円の下落リスクと市場の行方

日銀の追加利上げ観測が急速に強まり、外為市場では円高が進行している。ドル円は下落幅の拡大を警戒する局面に差し掛かっており、今後の市場動向が注目される。
1月14日、日銀の氷見野良三副総裁は、来週の金融政策決定会合で「展望レポート」に基づいて利上げの可否を議論すると発言。続いて、1月15日には植田和男総裁も追加利上げの可能性を示唆した。日銀の要職者が相次いで利上げの議論に言及したことで、短期金融市場では約80%の確率で追加利上げが織り込まれつつある。
国内債券市場では、日銀の金融政策引き締め観測が強まり、短期金利を反映しやすい2年債利回りが1月15日から16日にかけて2008年10月以来となる0.7%へと上昇。一方、10年債利回りも2011年4月以来の1.25%を記録し、国内金利の上昇基調が明確になっている。
これに対し、米国の金利は上昇から低下へと転じている。きっかけとなったのは、2024年12月の米消費者物価コア指数(CPI)の発表だった。前月比・前年同月比ともに伸びが鈍化し、市場予想を下回ったことで、インフレ懸念が和らいだ。これを受けて、米国債利回りの魅力が再評価され、10年債利回りは一時4.8%まで上昇した後、1月16日には4.58%へと急低下。さらに、5%台へ上昇していた20年債・30年債利回りも、それぞれ4.9%台、4.8%台へと低下している。
また、国内総生産(GDP)の算出に用いられるコアの小売売上高(自動車、ガソリン、外食、建設資材を除く指数)は、2024年12月に前月比0.7%増加し、市場予想の0.4%を上回った。直近3カ月で最大の伸びを記録したものの、米金利の低下幅が拡大していることから、米金利の上昇トレンドが一服する可能性が示唆されている。
国内金利が上昇基調を維持する一方、米金利が低下へ転じたことで、円安圧力は後退しつつある。ドル円(USD/JPY)は日米金利差と強く相関しており、クロス円もドル円の動きに連動しやすいため、日米金利差の縮小はドル円の下落圧力を強める要因となる。
昨年12月中旬以降、米金利が上昇してもドル円の上昇幅は限定的であった。そして、直近では2024年12月の米消費者物価コア指数(CPI)の鈍化をきっかけに、米金利の低下幅が拡大している。米国債の利回りが相対的に魅力を増していることを踏まえれば、米金利のさらなる上昇は一旦収束する可能性がある。一方、日銀の追加利上げ観測が高まる国内では、金利の上昇基調が続く見込みだ。
米金利の上昇が一服し、国内金利が引き続き上昇することで、日米利回り格差は縮小し、ドル円の下落圧力が強まると考えられる。ドル円の下落はクロス円にも波及し、円高圧力をさらに強めることが予想される。このため、日銀会合前の1週間は、投機的な円高の進行を警戒する必要がある。
今後1週間は、日銀の追加利上げ観測を背景とした円高の進行に注意を要する。ドル円(USD/JPY)の焦点は、新たな下値水準の見極めにある。本日の予想レンジは153.75~156.20で、特に下値を試す展開が想定される。
サポートラインとして、以下の水準が注目される。
- 155.00:サポートライン
- 154.80:50日移動平均線(日足)
- 154.32:フィボナッチ・リトレースメント23.6%(日足)
- 154.00:サポートライン
- 153.76:半値戻し、予想レンジの下限(日足)
本日以降、ドル円が下値を試す局面では、50日線と89日線の攻防が重要なポイントとなる。現時点で50日線は154.80レベル、89日線は152.10レベルで推移している。ドル円が155.00を下方ブレイクした場合、まずは50日線で下げ止まるかどうかが焦点となる。さらに50日線を割り込んだ場合は、昨年9月16日の安値を基点とするフィボナッチ・リトレースメント23.6%の水準154.32が意識され、このラインを下抜けると154.00を試す可能性がある。
また、154.00を下回った場合、昨年12月3日の安値を基点とした半値戻しの水準153.76が次の重要なサポートラインとなる。本日の予想レンジ下限はこの水準に設定される。
一方で、ドル円が反発する場合は、以下のレジスタンスラインの攻防が焦点となる。本日の予想レンジ上限は156.25レベルとする。
- 156.24:フィボナッチ・リトレースメント38.2%(45分足)
- 156.00:レジスタンスライン(日足、45分足)
- 155.77:フィボナッチ・リトレースメント23.6%(45分足)
- 155.50:レジスタンスラインへ転換する可能性あり(45分足)
ドル円が反発局面に入った場合、まずは156.00の攻防が注目される。この水準はレジスタンスへと転換する可能性がある。さらに、155.50および155.77の水準も抵抗線となる可能性があり、特に後者は直近高安の23.6%水準に相当する。
また、テクニカル指標では日足のMACDがデッドクロスに転じ、ゼロラインを視野に下落中である。モメンタムもゼロラインを下回っており、これらの指標はいずれも弱気相場の勢いが増していることを示唆している。そのため、本日ドル円が反発しても、その上昇幅は限定的になる可能性が高い。
仮にドル円が156円台へと上昇した場合でも、フィボナッチ・リトレースメント38.2%の水準156.24レベルで反落する展開が想定される。この水準は1月16日に戻りを抑えたレジスタンスラインでもあり、本日の予想レンジ上限と見ている。
全体として、今後のドル円相場は日米金利差の動向に強く影響を受ける展開が続くと予想される。
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