ポンド円相場の分析:テクニカル指標と英国雇用統計の影響

ポンド円(GBP/JPY)相場は近年、大きな変動を示している。8月5日に安値180.11レベルまで急落した後、9月2日には193.48レベルまで反発する局面が見られた。この動きは、ドル円(USD/JPY)の反発とポンドドル(GBP/USD)の上昇が重なったことによるものである。
しかし、ポンド円の上昇局面では戻り売りを警戒する必要がある。ポンド円はドル円の動きに強く影響を受けており、現在のドル円のトレンドは「米ドル安・円高」にある。
米国の中央銀行である連邦準備制度理事会(FRB)は、9月の連邦公開市場委員会(FOMC)以降、緩和サイクルへ移行する可能性が高いと見られている。この動きにより、日本と米国の金利差がさらに縮まると予測されている。
7月頃から、日本銀行と米連邦準備制度理事会の金融政策の方向性が徐々に明らかになってきており、この金利差の縮小に伴って、ドル円相場は下落傾向に転じている。この状況を受けて、ポンド円相場も下落の可能性を視野に入れる必要がある段階に入っている。
テクニカルの観点からも、ポンド円の下値トライが示唆されている。日足チャートでは、10日線と21日線がデッドクロスへ転じており、RSI(相対力指数)とMACD(移動平均収束拡散法)でも同様の状況が確認されている。これらの指標は、相場の下落傾向を示唆している。
ポンド円相場は、ドル円(USD/JPY)の動向から大きな影響を受けている。現在のドル円相場が下落傾向にあることを考慮すると、ポンド円が一時的に上昇した場合でも、その後の下落(戻り売り)に注意を払う必要がある。
さらに、ポンド円が下落し始めた場合、その下落幅が予想以上に大きくなる可能性も考慮に入れるべきである。
ポンド円が下値をトライする場合、注目すべき水準がいくつか存在する。まず、8月5日の安値180.11レベルをレンジの下限と想定し、183円を維持できるかどうかが焦点となる。
183.26レベルは、8月5日の安値と9月2日の高値の間の76.4%の位置にあたり、重要なテクニカルラインである。また、現在サポートラインとして認識されている186.79円(半値戻し水準)と185.21円(61.8%水準)の攻防も注目される。ポンド円が185.21レベルを容易に下方ブレイクする場合、一気に183円台を目指す展開が想定される。
ポンド円相場が反発する場合、10日線(189.60円台)と21日線(190.00円前後)を超えるかどうかが重要となる。189円台に到達することは、これらの移動平均線を目指す動きであると解釈できる可能性が高い。
より短期的な動きを見るための15分足チャートでは、半値戻しの水準とフィボナッチ・リトレースメントの攻防が重要となる。半値戻しの水準は188円台への上昇を判断する上で重要な指標となる。
ポンド円がこの半値戻しの水準を超えた後、一時的な下落があっても188円台を保持できる場合、次の注目点はフィボナッチ・リトレースメントの61.8%にあたる188.36円、そして76.4%にあたる188.83円となる。これらの水準に到達するかどうかを注視する必要がある。
相場の過熱感とトレンドを確認するには、分足チャートでRSIとMACDを活用することが有効である。レジスタンスの水準をポンド円がトライする際、RSIが買われ過ぎの水準でデッドクロスへ転じ、MACDでも同様の状況が確認される場合は戻り売りを意識する必要がある。
ポンド円相場の動向に影響を与える重要な要因として、9月10日の日本時間15時に発表予定の英国の雇用関連経済指標が注目されている。米ドルの場合と同様に、ポンドにとっても雇用関連の経済指標は今後の相場を左右する重要な要素となる見込みだ。これは、これらの指標が英中銀の金融政策決定に大きな影響を及ぼすためである。
英中銀は9月19日に金融政策委員会(MPC)を開催する予定だ。現時点では、短期金融市場の大勢は政策金利据え置きを予想しているが、9月10日の雇用関連指標の内容次第では、現在20%台で推移している利下げの可能性が高まる可能性もある。
9月10日に英国立統計局(ONS)が発表する雇用関連の経済指標のうち、特に注目されているのは5月から7月までの3ヶ月平均の賃金統計だ。この統計は、英中銀が重視するサービス価格の動向に大きな影響を与えるため、市場参加者から高い関心を集めている。
市場予想では、賃金の伸び率が前年同期比で4.1%と、4から6月の4.5%からさらに抑制される見通しにある。また、変動の大きいボーナスを除くベースでは同比5.1%と、4から6月の5.4%から賃金インフレの鈍化が見込まれている。
英中銀の政策判断に大きな影響を与えるサービス価格は、賃金上昇率の鈍化に伴い、前年同月比で5.2%まで下がっている。5月から7月の賃金上昇率が予想通りか、あるいはそれ以上に鈍化した場合、サービス価格がさらに下落する可能性があり、これによって英中銀が利下げを行うのではないかという市場の期待が高まる可能性がある。
このような状況になれば、外国為替市場でポンドの売り圧力が強まり、ポンド円相場が予想以上に下落する可能性がある。
しかし、もし賃金上昇率が予想以上に高く、賃金インフレが持続的であることを示すデータとなった場合、逆にポンド買いの要因となる可能性がある。ポンドが強くなればポンド円相場も上昇する要因となるが、その上昇の程度はドル円相場の動きに大きく影響されると考えられる。
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